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二人声劇: 配信-ハイシン-

  • 二人声劇台本(台本参加人数2人)

  • 5分読了

  • 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)


「お休み。」


「お休みなさい。また明日。」

そういって、ディスコードの通話が切れない。

通話を途切れさせずに、朝まで通話状態を保っておく。

寝ていても彼の吐息や寝返りを打った音を聞けるのは私だけだ。

「寝た?」


「...」


どうやら、彼は即寝たようだ。

私は、ディスコードの通話を繋ぎながら、インターネットを探る。

「遠距離」「恋愛」「配信者」と検索窓に打ち込みながら。


「まだ起きてるの?」


「あっごめん、起こしちゃった?」


「んーん。また寝る。」


「お休み。」

急な彼の声はドキッとする。

初めて会った(?)時もそうだった。


「いらっしゃい。○○さん。」


第一声を聴いた時点で心を持っていかれた。

それが彼との初めての接触だ。

いまでは、こうして二人っきりで通話をする仲にまでなった。

これはとても誇らしいことで、トップ配信者の○○くんと時間を共有できるのは他に誰もいない。

こうして、彼の寝言や布団が擦れる音を聞いているのも嬉しい。

通話を切らないことで、夜中でもずっと繋がっている感覚。恍惚とした感情と彼を愛らしいと思おう感情が一気に推し流れてくる。

そんな気持ちに包まれながら眠りに落ちる日々だ。

「(もう、朝。)○○君、おはよう。」

「あれ?」

いつもは繋がっているはずの通話が今日は繋がっていなかった。

「寝ぼけて、切ったのかな?それともバグっちゃったかな?」

不安に思う気持ちを、あらゆる方向からの理由で断ち切ろうとした。

しかし、不安はそのあらゆる方向の理由のどれでもなかった。

通知を取っていた彼のSNS。

スマホの通知欄にはポップアップで少ししか見れなかったけど、

引退の文字が見えた。

不安と焦燥を胸に彼のコメントしているSNSを開くと、

「引退」と「お付き合い」の文字。

何が何だか、私にはわからなかった。


「○○さんと付き合うため、配信活動をお休みします」


そう書かれていた。

そしてコメント欄には祝福のコメントと蔑むコメント。

私の気持ちはどのコメントにも反映されてなかった。

すぐさま、彼にダイレクトメッセージを送る。

返ってこない。

彼に追いDMをする。

返ってこない。

さまざまな想いがまとまらない言葉になって長文の文面になっていく。

「好きなの」

「声が心地よかった」

「言葉が素敵だった」

「DMしている時間が好きだった」

「あなたの匂いを感じたかった」

「仕草を真似してみたかった」

「笑顔を見てみたかった」

「あなたのすべてを愛してみたかった」


「ごめん」

「声しかしらない女のこと、僕は好きになれない」


声劇台本を書くにあたって参考にした書籍

僕が作成した声劇台本にはインスピレーションを受けた事象や書籍があります。

それらの書籍を簡単にですが、ご紹介します。


ノルウェイの森 上 (講談社文庫)村上春樹(著)
ノルウェイの森 上(講談社文庫)村上春樹(著)

ヴィヨンの妻(新潮文庫)太宰治(著)
ヴィヨンの妻(新潮文庫)太宰治(著)

小説 秒速5センチメートル (角川文庫)新海誠(著)
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)新海誠(著)

華麗なるギャツビー(吹替版)
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