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一人声劇: 熟む-ウム-

執筆者の写真: seichan0329seichan0329
  • 一人声劇台本(台本参加人数1人)

  • 904文字

  • 5分読了

  • 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)


「告白ってどうやったっけ。」

私はどう恋をしたっけ。

忘れたままで日々を過ごしてる。

というか、日々を淡々と過ごすだけで、なんだか大事な感情を忘れていっている気がする。

「告白ってどうやったっけ。」

彼の事を私は好きなのだろうか。

好きという感情も日々に押し流されて、薄らいでいく。

好きになるって、どうやったっけ。

彼もまた一晩寝て終わりの関係なのだろうか。

彼とキスをして熱くなった身体を包まれて、この件はよく学生時代もしてた。

それでも、好きな人とそうでもない人で、ちゃんと分別を付けることが出来ていた。

大人になって、恋というトピックが結婚になった途端、私はうまく異性と付き合えなくなっていた。

「告白ってどうやったっけ。」

そう、私は彼を好きなことを知っている。

けど、好きの意味が分からない。

意味なんていらないことなんか分かっているけど、意味を持たない恋は瓦解することも知っている。

「告白ってどうやったっけ。」

「明日、DMで告白してみよう。」

そうつぶやいた自分はどうやら、恋している自分を演じているように感じた。

演じる自分を演じなくてはいけないのだろうか。

それは辛い未来しかない。...けど、想いと言葉と気持ちが相反してる。

気持ちを落ち着かせるために彼が宅飲みでおいていった翠ジンでソーダ割りを作る。

柚子の香りがほのかに漂って夜の温度が少しだけ高くなる。

「告白ってどうやったっけ。」

そうつぶやいた自分の頭には段々と告白をしなくてはいけない自分の立場に苛立ってきた。

「そうよ、彼が私に告白すればいいのよ。」

それでも、私のことを彼が身体目的でしか見ていないことは明白だった。

けれど、そのことについて辛いとか悲しいという感情は無かった。

「あーあ、やめたやめた。告白なんて子供がすること。」

「私は大人。誘惑して愛しあうの!」

恋をしないと愛に進めないと思っている子供から、恋が無くても愛は存在すると確信した空白な大人になった私は窓から見える雲に隠れた月の光を感じながら、柚子の香りに包まれ夢に落ちるのであった。


声劇台本を書くにあたって参考にした書籍

僕が作成した声劇台本にはインスピレーションを受けた事象や書籍があります。

それらの書籍を簡単にですが、ご紹介します。


ノルウェイの森 上 (講談社文庫)村上春樹(著)
ノルウェイの森 上(講談社文庫)村上春樹(著)

ヴィヨンの妻(新潮文庫)太宰治(著)
ヴィヨンの妻(新潮文庫)太宰治(著)

小説 秒速5センチメートル (角川文庫)新海誠(著)
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)新海誠(著)

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