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醜行-シュウコウ-

執筆者の写真: seichan0329seichan0329
  • 二人声劇台本(台本参加人数2人)

  • 1472文字

  • 5分読了

  • 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)


...それでは、君は悪とはどういったものと主張するわけだね?


私は、悪は成りあがるものだと思います。


ほう。つまり、どういうことだね。


悪は作り上げるものではないと主張したいのです。成り立ってしまうもの、それが悪なのではないでしょうか。教授。

映画や漫画に登場する「悪者」を見ていても、やれ世界征服だ、大事なものを守るだ、作られたフィクションなので、悪を感じない。私は作られた悪はフィクションであると考えます。


難しいことを言うじゃないかね。それでは悪は真に悪いものであると思うかね。


どうでしょうか。本物の悪を見たことがないので、よくわかりません。

しかし、フィクションの作られた悪は目にしています。

想像でしか悪を語ることは出来ませんが、正義の裏側に悪は潜んでいるのではないかと推察されます。


正義の裏側というと?


例えば、豚肉を美味しくレストランで食べているとき、調理場では豚が殺されて加工されます。

私たち人間の命を存続させる正義の行為が、他者、つまり豚には殺戮という悪であると思います。


つまり、君は悪とは正義の反対側に存在すると考えているのかね。


そうです。その通りです。


ほう、とても素晴らしい生徒をもって私は感激するよ。

しかし、間違いだ。悪の裏側に正義なんか存在しないし、正義の裏側にも悪は存在しない。


それでは先生、正義とは、悪とは一体何なのでしょうか。


正義の定義は難しい。人によって変わっていくからだ。

私は動物を食べない菜食主義だから、動物を食べないことによって地球が守られていると感じている。

しかし、君は豚を食べるようだね。君の休日の喜び、つまり正義は動物を食することだ。

だからと言って、私と君が正義と悪の対面に立っているとは思えない。そうだね?


たしかに、その通りであります。


動物を食べる正義と動物を食べない正義が今ぶつかったのだ。

この状態を争いという。


先生と争う気にはなれませんが、つまりその通りですね。


ここで、勘違いをしてほしくないのが、この争いに勝者として君臨した者を正義、敗退した者を悪とは言わないのだよ。


私は、勘違いをしていたようです。悪とは正義とは争いによって決定することだと思いました。


左様。

ここから本題に入る。

ノートとペンは持っているかな?


はい。いつも持ち歩いております。


充分である。今からいうことをしっかりと記録しておくことだ。


悪と正義について講義されるのですね。


難しい。その議題は難しい。

今から伝えるのは「何が悪で何が正義か」を君に考えさせる講義である。


はい...


悪の定義についてだが、私はいくつもの発展途上国で、世論で、SNSで悪を見てきた。その正体は"残忍さ"である。


"残忍さ"は確かに悪ではあります。

過度に嬲ったり、殺したりすることには心が痛みます。


左様。

この"残忍さ"が悪と今から伝えるが、本当に君に伝えたいトピックはそこではない。

人間はいつ"残忍さ"に目覚めるのかということだ。


悪に染まったときではないでしょうか。


違う。けっして違う。人間は悪に染まったとき"残忍さ"は皆無なのだよ。


では先生、人間が"残忍さ"を持ち合わせるタイミングはいつなのでしょうか。


それはね。君。

「正義の側に立った」と思ったときに人間は"残忍さ"を持ち合わせるのだ。

つまり、「自分は正しい」と免罪符を手に入れたのだから、正義という名のもとに仮定の悪を打ちのめすのだよ。

その"残忍さ"は快楽に近い。

君はその快楽に打ち勝てるかな?


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